昨年は,今高野山開基1200年記念事業が盛大に開催され,世羅邦楽ながつき会も,その栄えある会で演奏をさせていただく機会をいただき,誠にありがたく感謝の念に堪えません。
今高野山は,広島県内のみならず全国でも人気のある紅葉スポットと称されており,色鮮やかな紅葉に魅了され,時の流れを忘れるほどと言っても過言ではないでしょう。地域の方々はもとより多くのみなさまに,今高野山の史跡・名所を訪ねていただき,静寂の中で1200年という時の流れに思いを馳せていただきたいと思います。また,邦楽を通して,今高野山にこれまで以上の関心を寄せていただくことを切に願っております。
司会 鈴木 真理亜
1 平和の山河 尺八二重奏 作曲者 流祖 中尾 都山
尺 八 七川 樟山 瀬尾 昂山 富永 翠山
昭和26年作曲。敗戦の日本が平和条約を締結され,独立の喜びを表した記念の作品です。戦争では敗れましたが,故郷日本の山河は,昔と変わらない平和な姿をしている喜びを曲で表現したものです。尺八の柔らかい音色が,郷愁を誘います。
2 ふるさと抒情メドレー 尺八・筝合奏
第一筝 佐古 静栄 時永 和代 三上 貴久美
第二筝 植松 萌子 加藤 百合子 下堀 貴美子
尺 八 七川 樟山 瀬尾 昂山 富永 翠山
いつ覚えたのか記憶がないのに,ずっと心に残っている歌。口ずさむと,自然と心が温かくなり,幼い頃に見た真っ赤な夕焼けを思い出す。歳を重ねるほど,歌詞が心に染みて,何故か目頭が熱くなる。みなさまも,幼い頃にタイムスリップして,この曲を口ずさんでください。
3 赤い花束 筝三重奏 作曲者 佐藤 義久
第一筝 佐古 静栄
第二筝 三上 貴久美
十七絃 加藤 百合子
大好きな人にいつか出会えたら,赤い花束をあげたい。そして喜んでもらいたい。そんな,相手を思いやる気持ちが私たちの心に生まれたら,何と素敵なことでしょう。あなたは,赤い燃えるような花でいっぱいの花束を・・・真心で出来た赤い花束を・・・心の中にもっていますか。
4 黒田節変奏曲 尺八・筝合奏 作曲者 筑紫 歌都子
一筝 佐古 静栄 時永 和代 三上 貴久美
二筝 植松 萌子 加藤 百合子 下堀 貴美子
尺 八 七川 樟山 瀬尾 昂山 富永 翠山
黒田節は,筑前の大名黒田官兵衛の長男黒田長政の部下と福島正則の酒席のエピソードを元にした,福岡県の民謡です。当時,福岡藩の武士たちのあいだでは,雅楽“越天楽”のメロディーに合わせて,様々な歌詞を当てはめて歌う“越天楽今様”というものが流行っており,黒田節もそこから生れたと言われています。このような経緯をもとに,作曲者は,お祝い用に黒田節の曲をモチーフに作・編曲され,広くお祝いの席で演奏され,歌われています。
5 瀬戸の舟唄 尺八二重奏 作曲者 河内 杏山
尺 八 七川 樟山 瀬尾 昂山 富永 翠山
平成4年作曲。内海の月明りの晩は漁ができないので,漁師たちが夕方から酒果物類を用意して,幼少時に,波に乗って唄っていた頃の記憶を作品にしました。リズム,テンポが変化に富んでおり,尺八奏法の基本が強調されています。
6 雪月花によせて 尺八・筝合奏 作曲者 吉崎 克彦
第一筝 植松 萌子 佐古 静栄 時永 和代
第二筝 下堀 貴美子 三上 貴久美
十七絃 加藤 百合子
尺 八 七川 樟山 瀬尾 昂山 富永 翠山
平成4年作曲。雪月花とは,日本の美しさを表す代表的な言葉として使用されますが,深々と降り積もる雪も,冴え渡る月も,その裏には古来人々の熱い想いが託されています。花は言うまでもなく桜を意味し,月夜に見る満開の夜桜など,日本的自然観とそこに託された想いを,日本の伝統的楽器である箏・尺八のための四重奏曲として現代的な感性で表現されています。